ビールの種類としては国内と海外で無数に販売されています。
ビールに興味があるけど何を選んだらよいか分からない方や、普段飲んでいるビール以外にどんなビールがあるのか知りたいという方も多いのではないでしょうか?
この記事では上記のようなビールに関するさまざまな疑問を持っている方向けに、過去のバーテンダー勤務の経験や、ビールをはじめとして様々なお酒を楽しんでいる筆者から、ビールの種類解説からおすすめのビールをメーカーや種類別に紹介していきます。
ビールは大きく分けて2種類
ビールは大きく分けると、エールビールとラガービールの2種類に分けることができます。
この分け方は、発酵方法の違いによるもので、エールビールは上面発酵で、ラガービールは下面発酵で作られています。
この2種類以外にも、自然発酵で作られるビールもありますので、発酵方法は3種類あることになりますが、ほとんどのビールはエールビールかラガービールに分けることができます。
上面発酵(エール)
エールビールの主な原料は大麦麦芽です。
酵母を常温のまま短期間で発酵させ、複雑な香りや深いコク、そしてフルーティーな味を生み出しているのがエールビールです。
ほとんどのエールビールにはホップが使われているのですが、実はこのホップの毬花の中にある、「ルプリン」という黄色い粒状の樹脂が、ビールづくりに大きな役割を果たしています。
エールビールの特徴
まずホップは、ビール特有の苦みの元になっています。
原料である大麦麦芽を麦汁にしたところにホップを加えて煮沸することで、ホップの苦み成分を麦汁に移します。この苦みによって、麦汁の甘さとのバランスを取っているわけです。
また、このとき移るのは苦み成分だけでなく、一緒にホップの香りも移るため、今や100種類以上もあるホップのどれを使うかによって、出来上がったビールの香りに違いが生まれるのです。
しかもホップには、炭酸ガスを逃さずに泡を維持する役割と、ビールの腐敗を防いで保存に役立つ殺菌効果もあります。
エールビールの歴史
今でこそ殺菌の技術が進んでいますが、エールビールの原点は古代ローマ帝国時代に遡ると言われており、この殺菌効果がどれだけ大事なものだったのかが分かります。
特に、イギリスで作ったエールビールを植民地であるインドに送っていた18世紀から19世紀頃は、船での長い輸送でもエールビールが腐らないように、ホップを増量したり、アルコール度数を高めにしたりといった方法が取られていたほどです。
エールビールには、上面発酵酵母が使われています。上面発酵酵母が発酵すると、酵母が炭酸ガスと一緒に表面に浮かんできます。
これが上面発酵と言われる理由で、発酵するときの温度は16~24度の常温で、だいたい3~6日ほどで発酵し、その後、約2週間熟成させて作られます。
常温で発酵させるため、雑菌との戦いは避けられないものですが、イギリスのように夏涼しくて冬温かい気候は、常温発酵のエールビールに適していたため、イギリスでエールビールが人気になったと言われています。
エールビールはこのように長い歴史を持つため、色や香り、味もバリエーションに富み、多くのスタイルが生まれてきました。
常温発酵させるため、酵母が香りを生み出し、味を複雑にしているのも特徴です。
エールビールは冷えてない??
「外国で飲むビールは冷えていない」という話をよく耳にします。
香りは温度に左右されやすいため、日本のように低温で保存してしまうと、エールビール本来の香りが感じられなくなってしまうため、あえて常温で提供しています。
この常温保存する点もエールビールの特徴の一つです。
下面発酵(ラガー)
国内で聞くラガービールとは?
大麦麦芽、ホップ、酵母、水といった原料はエールビールと同じですが、この中の酵母の違いが、エールビールと区別される発酵の差なのです。
エールビールが上面発酵なのに対し、ラガービールは下面発酵で作られますが、これは、発酵すると酵母が固まり、沈んで下に溜まるという酵母の性質から、この名前が付けられています。
10度前後の低温のまま、6~10日ほどかけてゆっくり発酵が進むため、雑菌が繁殖しにくく、熟成に約1か月かかりますが、エールビールより製造管理がしやすいというメリットがあります。
この低温発酵により、一定の品質で大量生産することができるようになったことが、大手のビールメーカーのビールのほとんどがこのラガーである理由です。
ラガービールの歴史
エールビールに比べると歴史は浅いのですが、中世以降にその歴史は始まり、19世紀以降になって、世界の主流になったのがラガービールです。
16世紀頃までは、一次発酵が終った段階で出荷され、そのまま販売されていましたが、貯蔵庫に貯蔵しておくことによって、味が良くなることがわかりました。
そのため、ドイツ語で「貯蔵」を意味するラガーという名がつけられ、貯蔵庫で二次発酵を行うようになりました。
日本のビールに関する法律でも、「貯蔵工程で熟成させたビールでなければ、ラガービールと表示してはならない」とされています。
ラガービールの特徴
低温で熟成させるため、エールビールのような華やかな香りはありません。
ただ喉ごしがよく、爽やかな飲み心地を味わえるように、冷やして飲まれるのもラガービールの特徴です。
その他(自然発酵で作られるビール)
エールビールとラガービールの2つと異なるビールとしては、自然発酵で作られるビールもあります。
培養した酵母を使わずに、空気中の野生の酵母や微生物を利用する作り方です。
伝統的なベルギーのビールで、昔は多く作られていたと言われていますが、今ではエールビールやラガービールが主流になっているため、数は限られています。
特に有名なのはベルギーのランビックというスタイルのビールですが、酸味が強く、香りも独特です。
そのため、数種類のランビックを混ぜて味を調えたり、フルーツを混ぜるなど、バリエーションがあるのが特長です。
ちなみに日本のブルワリーでも、自然発酵のビールは作られています。
種類別のおすすめビール解説
エールビールもラガービールも、結構種類があり、それぞれ味も違います。
そういった多くの種類の中から、自分に合ったビールを見つけるには時間とお金が必要です。
例えば、エールビールとラガービールの代表的なビールをぞれぞれ飲んでみて、どちらが好みかを考えてみるのもひとつの方法です。
ここでは、飲み比べの参考となる、代表的なビールを紹介していきます。
エールビールのおすすめ
エールビールはとにかく種類が多く、代表的なものを挙げるのが難しいジャンルですが、あえて挙げるとすれば、色による区別が比較的簡単です。
金色のいかにもビールの色をしているペールエール、黒色のスタウト、そして白色のベルジャンホワイトなどが、代表的なエールビールです。
では、その中でも代表的なエールビールを2つ、紹介します。
ヒューガルデン ホワイト
ビールの詳細
・原材料名:麦芽、ホップ、小麦、糖類、コリアンダーシード、オレンジピール
・アルコール分:5%
・内容量:330ml
・原産国名:ベルギー
・醸造所:ヒューガルデン醸造所
生きた酵母を加えて、瓶内で二次発酵させたエールビールで、オレンジピールとコリアンダーの香りが爽やかに感じられます。
白く濁っていますが、若干黄色がかっていて、飲むと爽やかな酸味とエールビール独特の甘みを感じることができます。
ホワイトビール、またはベルジャン・ホワイトと呼ばれていますが、「白ビールの王道」と言われている、日本でも人気の高いベルギービールです。
ビールは一般的に苦いものという固定観念がありますが、フルーティーな上に、オレンジピールとコリアンダーシードといったスパイスが使われているため、爽やかで飲みやすく仕上がっています。
この「スパイスを使用する」というところがベルジャン・ホワイトの特徴ですが、さらに瓶詰の際に二次発酵用の酵母と少量の糖を加えています。
これにより、瓶詰した後でも瓶内で発酵が行われ、さらに熟成させるという作り方です。
ギネス オリジナル エクストラ スタウト
ビールの詳細
・原材料名:麦芽、ホップ、大麦
・アルコール分:5%
・内容量:330ml
・原産国名:アイルランド
・醸造所:セントジェームズゲート醸造所
日本でも多くのファンがいる、色も味わいも深い、黒ビールです。
ホップの香りと大麦の爽やかな味わいが印象的で、後味がまた口の中に余韻として残るのが特徴的です。
苦みなのに嫌ではなく、甘みとの組み合わせが丁度よく、重いと言われる黒ビールでありながら、爽快さも持ち合わせているところが、多くの人に愛される理由です。
ギネスビールには10種類以上のビールがありますが、このエクストラスタウトは1821年に二代目のアーサー・ギネス2世が残したレシピに忠実に、今も作られている黒ビールです。
セントジェームズゲート醸造所はアイルランドの首都であるダブリンにあり、アイリッシュ・バーレイという品種の大麦麦芽を原料としていますが、実は瓶と缶では中身が違います。
缶のギネスには、酸化防止のために窒素が充填されていますが、この窒素のおかげで独特な細かな泡が生まれます。
瓶のギネスには窒素が充填されていないため、細かな泡はありませんが、その分風味と爽快感を味わうことができます。
ラガービールのおすすめ
ラガービールにはエールビールほどの種類はありませんが、世界で飲まれているビールの内、実に70%がラガービールのひとつである、ピルスナーだと言われています。
下面発酵で保存に適しているという理由から、多くのビールメーカーが作っているということも理由のひとつですが、冷やして喉ごしを楽しむという意味では、日本のように湿度の高い夏の国には、とても適したビールと言えます。
では、代表的なラガービールを2つ、紹介します。
ヴァルシュタイナー
ビールの詳細
・原材料名:麦芽、ホップ(麦芽使用率100%)
・アルコール分:4.0~5.0%
・内容量:330ml
・原産国名:ドイツ
・醸造所:ヴァルシュタイナー醸造所
ヴァルシュタイナーは、オランダ、ベルギーと国境を接しているドイツのノルドライン・ヴェストフォーレン州にあるヴァルシュタインという町で、醸造されています。
ドイツの4つのピルスナーの1つである、ザウアーレンダー・ピルスナーの中でも最も代表的で伝統的なピルスナーが、このヴァルシュタイナーです。
透明感のあるきれいな淡い黄金色のラガービールで、わずかな蜂蜜のような甘さと、後から来るマイルドなホップ独特の苦みが特徴ですが、フルーツ系のリンゴのような酸味と苦みのバランスがよく、軽くてなめらかな口当たりに仕上がっています。
ドイツには「ビール純粋令」というビールに関する法律があり、麦芽、ホップ、酵母、水のみを使用することと定められています。
ヴァルシュタインの近くにはアルンスベルクと呼ばれる森がありますが、この森にある世界的な名水と言われるカイザー・クベッレ泉の天然水を使用しているため、マイルドな味に仕上がっていることも、ドイツで広く親しまれている理由の一つです。
コロナ エキストラ
ビールの詳細
・原材料名:麦芽、ホップ、コーン
・アルコール分:4.5%
・内容量:355ml
・原産国名:メキシコ
・醸造所:モデロ醸造所
1925年に開発され、販売が開始されたコロナエキストラは、日本の輸入ビールの第1位です。
明るい黄金色で、味に全くと言っていいほど癖がないため、とても飲みやすく、どんな料理にでも合いますが、カットしたライムを瓶の口に挿して提供するスタイルで有名になり、グラスには注がずにそのまま飲むイメージが定着しました。
冷やすと特に喉ごしがよく、まるで炭酸飲料のように飲めるところが、ビーチや暑い夏の屋外での飲用にぴったりです。
ちなみに、コロナビールの公式サイトには、「透明のボトルをキンキンに冷やし、カットライムを挿して飲む」と書かれているものの、カットライムを挿す理由については諸説あり、その起源についてははっきりとはしていません。
ビールのスタイル紹介
ビールは発酵の仕方によってエールとラガーに分類することができますが、その2つをさらに細かく分類したものが、スタイルです。
スタイルは実に100種類以上もあるのですが、ここではその中でも代表的なスタイルを紹介します。
ピルスナー(Pilsner)
1842年に、チェコのピルゼンにある市民醸造所で作られたビールです。
現在世界で飲まれているピルスナーの元祖と言われており、作り間違えから偶然にできたという説もありますが、そのおかげで今のピルスナーがあります。
色の淡い麦芽を使用するためにビールの色も淡く、ホップがよく効いた爽快な味です。
この製法を参考にしてできたジャーマンピルスナーを、今度は日本のビールメーカーが参考にしたという経緯があるため、今現在日本で飲めるラガービールの手本と言っていいビールです。
ラーデベルガー ピルスナー
ビールの詳細
・原材料名:麦芽、ホップ
・アルコール分:5.0%
・内容量:330ml
・原産国名:ドイツ
・醸造所:ラーデベルガー醸造所
ドイツ革命以前、まだザクセン王国だった頃に、ザクセン王から「王の飲み物」として認定されたのが、このラーデベルガーピルスナーです。
1872年にラーデベルグという町で作られたため、この名前が付けられましたが、麦芽、ホップ、酵母、水のみを使用するという法律を守るのはもちろんのこと、自社で保有するビール作りに最適な井戸水を使用し、8基という少ない醸造釜で、納得のいくビールを、今でもラーデベルグの醸造所で作り続けられています。
味はしっかりしていますが、炭酸の爽快感がよく、その少しあとに強めの苦みがやって来ます。
日本で飲めるピルスナーを基準にしている人にとっては、苦みがきつく思える、逆にドイツらしい本場のビールが飲みたい人にはお勧めなビールです。
ドルトムンダー(Dortmunder)
北ドイツの工業地域であるドルトムントで作られた、淡色のビールです。
20世紀の初め頃、ドルトムントには醸造所が120以上もあり、ドイツ最大のビール生産都市でした。
そのため、「オクトーバーフェスト」の開催地ミュンヘンと並んで、ビール好きが訪れる町としても有名です。
ベアレン クラシック
ビールの詳細
・原材料名:麦芽、ホップ
・アルコール分:6.0%
・内容量:330ml
・原産国名:日本
・醸造所:ベアレン醸造所
ドルトムンダーは、当時人気だったピルスナーを参考に作られましたが、元のピルスナーとは異なる製法をとったため、生産地の名を取ってドルトムンダーと呼ばれています。
似たスタイルである「ボヘミアンピルスナー」、「ジャーマンピルスナー」、「ミュンヘナーへレス」と合わせて、「ピルスナーファミリー」とも呼ばれています。
ブロンドビールと呼ばれる透き通った淡い色で、ホップの苦みとモルト甘みのバランスがよいのが特徴です。
ホップの香りや苦みを抑えているため、口当たりがとても軽く、柔らかい印象の味わいです。
ベアレン醸造所は岩手にある醸造所ですが、クラシックの名の通り、ドルトムンダーを忠実に再現しており、飲みやすい仕上がりになっています。
IPA
IPAは、 インディアペールエールの頭文字を取ったもので、アイピーエーと読みます。
まだインドがイギリスの植民地だった18世紀末に、インドに滞在するイギリス人宛にペールエールを送るために作られたビールです。
そもそも、インドから帰ってくる船は積み荷が満載なのに、行きの船がガラガラだったためにエールを運ぼうとしたのが始まりです。
当時の技術で腐らないようにするためには、麦汁の濃度を上げ、アルコール度数を上げ、ホップを大量に入れるという方法しかなかったため、香りも苦みも、普通のエールとはまるで違うものになりました。
しかも船旅の間に赤道を2度も越えるため、希薄化し、ドライで強炭酸になっていたと言われていますので、インドでこれを飲んだイギリス人も驚いたことでしょう。
ブリュードッグ パンク IPA
ビールの詳細
・原材料名:麦芽、ホップ
・アルコール分:5.4%
・内容量:330ml
・原産国名:スコットランド
・醸造所:ブリュードッグ醸造所
ブリュードッグ醸造所は、比較的最近である2007年にスコットランドで始まった醸造所です。
創業者であるジェームズ・ワットが、世界一のIPAを目指すために、採算を度外視して作ったのがこのブリュードッグ パンク IPAで、大量のホップを贅沢に使うことで、ホップの香りを最大限に引き出しています。
こうした努力や味が多くのビールファンを引き付け、今やイギリスで一番の売り上げを誇るクラフトブルワリーになりました。
色は透明感のある金色で、麦芽のしっかりした甘みと香り、フルーツの香りがホップの香りと一緒にやってきます。
とにかくホップを感じられる仕上がりになっていますので、この贅沢な味と香りを体験してみてください。
ペールエール(Pale Ale)
ペールエールは、18世紀にイギリスのバートン・オン・トレントという町で作られました。
それまでは麦芽の焙煎を木炭で行っていたため色の濃いビールがほとんどで、それと比較すると色が淡かったため、色が淡いという意味の「ペール」が付けられ、ペールエールと呼ばれるようになりました。
麦芽の持つコクが特徴であるペールエールは、アメリカに渡ることで、ホップの香りが特長の「アメリカン・ペールエール」に生まれ変わり、世界に広まりました。
そのため現在は、元からある「イングリッシュ・ペールエール」と、アメリカで生まれた「アメリカン・ペールエール」の2種類があります。
フラーズ ロンドン プライド
ビールの詳細
・原材料名:麦芽、ホップ
・アルコール分:5.0%
・内容量:330ml
・原産国名:イギリス
・醸造所:フラーズ醸造所
ペールエールは、ピルスナーよりは茶色がかった、モルトのコクやホップの香りがふくよかなビールです。
苦みも控えめで喉ごしがよいため、食事にも合わせやすく、もしクラフトビール初心者であれば、是非お勧めしたいビールのひとつです。
冷やしても美味しいビールですが、香りを楽しむのであれば多少ぬるいくらいの温度で飲む方がよいのが特徴でもあります。
ポーター(Porter)
18世紀に、ロンドンの荷役運搬人(ポーター)を中心に人気が出たビールです。
酸味が出てしまったブラウンエールに、作りたてのブラウンエール、そこにペールエールをブレンドしたものが、ポーターの起源と言われています。
このように複数のエールをブレンドして作るお手頃感に加え、ホップの苦みも強く、濃厚で力強い味を彼らが好んだため、この名前が作られましたが、スタウトが現れてからは、黒ビールはスタウトの代名詞となりました。
しかし最近また復活した、歴史は古いけど新しいビールでもあります。
アンカー ポーター
ビールの詳細
・原材料名:麦芽、ホップ
・アルコール分:5.5%
・内容量:355ml
・原産国名:アメリカ
・醸造所:アンカー醸造所
色は黒ですが、スタウトほどに真っ黒ではなく、同様に黒い泡も少し粗めでクリーミーですが苦味が強く、コクもあるビールです。
黒ビール独特のローストされた香りに、ハーブのような甘い匂いがしますが、苦みが強いのに甘みもある面白い味わいです。
エールビールは全般的に冷やし過ぎない方が香りを楽しめますが、ポーターは特に、喉ごしよりも味と香りを楽しむビールですので、10度前後にしたものを、ゆっくり時間をかけて飲む方が美味しく感じられます。
スタウト(Stout)
アイルランドのギネスビール創業者である、アーサー・ギネス氏がポーターを改良して作ったのがスタウトの始まりです。
それまでは砂糖の使用は許可されていなかったのですが、1847年に許可されたため、砂糖が使用されているのが特長のひとつです。
スタウトは英語で「どっしりとした、頑固な、頑強な」といった意味の単語で、その名の通り、アルコール度数を上げた黒ビールで、香ばしく、まるでコーヒーのような香りが特徴です。
バルティック スタウト
ビールの詳細
・原材料名:麦芽、小麦、オーツ麦、糖類、ホップ、酵母
・アルコール分:7.0~8.0%
・内容量:330ml
・原産国名:ドイツ
・醸造所:インゼル醸造所
ワールドビアアワード2017で、金賞を受賞したドイツNo.1のインペリアルスタウトです。
包装紙にはフクロウが描かれていますが、このバルティックスタウトを作っているインゼル醸造所のある、バルト海に浮かぶリューゲン島に生息しているフクロウがモデルになっています。
インゼル醸造所では、空気と共に1次醗酵させた後、熟成用のタンクを使って2次醗酵させ、さらに瓶詰め前に新たに酵母を加えることで、3回発酵させるといったこだわりの製法を続けています。
そして、フクロウの包装紙は、環境に優しいナチュラルペーパーで、光による劣化を防ぐという役目もあるのです。
アルコール度数を上げたスタウトのことをインペリアルスタウトと言いますが、泡もとても細かく、まるでチョコレートやコーヒーのような苦みとクリーミーな風味と、度数を上げたアルコールのバランスが見事です。
焙煎の焦げた感じと、見事なまでに真っ黒な色からは想像できないほど滑らかな口当たりで、とても満足感の強いビールです。
ヴァイツェン(Weizen)
ドイツ語で小麦のことをヴァイツェンと言いますが、小麦麦芽を50%以上使って作る、南ドイツ発祥の伝統的なビールです。
一般的にヴァイツェンというと、酵母を濾過しない濁りのある「ヘーフェヴァイツェン」ですが、他にも、酵母を濾過した「クリスタルヴァイツェン」、焙煎した大麦麦芽を使って色を濃くした「ドゥンケルヴァイツェン」、アルコール度数が高くい「ヴァイツェン・ボック」などがあります。
ビールなのに苦みがほとんどなく、バナナやクローブのような香りと、泡立ちのよいことが特徴です。
シュナイダー・ヴァイス アヴェンティヌス
ビールの詳細
・原材料名:麦芽、ホップ
・アルコール分:8.2%
・内容量:500ml
・原産国名:ドイツ
・醸造所:シュナイダー・ヴァイセ醸造所
1872年、元々はバイエルン王室の醸造所で醸造されていた白ビールでしたが、売上高が減少したため、国王のルートヴィヒⅡ世は生産を中止してしまいました。
そして売りに出されたケルハイム醸造所を買い取ったのが、ゲオルク・シュナイダーⅠ世で、彼が作ったシュナイダー・ヴァイセ(シュナイダーの白ビール)のオリジナルレシピは、現社長であるゲオルク・シュナイダーⅥ世が、今も変わらずに使用しているのです。
シュナイダーと言えばヴァイスビアというほど、秀逸なヴァイスビアとして世界中で飲まれている銘柄で、ヨーロッパ最大のビールコンペティション「ヨーロピアンビアスター」で金賞受賞、「ワールドビアカップ2014」でも金賞受賞という、見事なビールです。
麦芽比率が高いため麦の味わいが濃厚で、少し透明感のある琥珀色と柔らかい泡、そしてフルーティな香りが見事なバランスに仕上がっています。
シュバルツ(Schwarz)
ドイツ東部にあるテューリンゲン、ザクセン、ブランデンブルクといった地域で作られたのが発祥で、ドイツ語で黒のことをシュバルツと言うのですが、スタウトやポーターが上面発酵のエールビールであるのに対し、シュバルツは下面発酵ですのでラガービールです。
色は漆黒ですが、見た目とは反対にすっきりした味わいで、焙煎した麦芽独特のコーヒーやチョコレートのような味わいと香ばしさを感じられるビールです。
ドイツの詩人、ゲーテがよく好んで飲んでいたことでも有名です。
ベアレン シュバルツ
ビールの詳細
・原材料名:麦芽、ホップ
・アルコール分:5.5%
・内容量:330ml
・原産国名:日本
・醸造所:ベアレン醸造所
岩手にあるベアレン醸造所で作られるベアレンシュバルツは、焙煎した麦芽の香ばしい香りと、ほのかに感じる甘みがバランスよく調和した、上品な味わいのビールです。
見た目は黒ですが、苦味が高くコクのある黒ビールと違い、とてもスッキリとしたまろやかな口当たりで苦みも少なく、喉ごしもすっきりしています。
黒ビールが苦手な人に、是非飲んでもらいたいビールです。
ベルジャンホワイト(Belgian White)
14世紀のベルギーのヒューガルデン村が発祥で、一度消滅しましたが1965年に復活したビールです。
麦芽になっていない小麦、オレンジピール、コリアンダーシードを使用しているため、柑橘やスパイスの香りがするのが特徴です。
ベルギー以外でも、アメリカやイタリアでも作られているほど人気があり、柔らかい味わいが楽しめます。
バラデン イザック
ビールの詳細
・原材料名:麦芽、ホップ、小麦、糖類、オレンジピール、コリアンダー
・アルコール分:5.0%
・内容量:330ml
・原産国名:イタリア
・醸造所:バラデン醸造所
音楽やアート、そして何よりもビールを愛するテオ・ムッソ氏が、イタリアで最初のクラフトビールを作ったのが、バラデン醸造所です。
この醸造所で作られたイザックは、やや濁りのあるアプリコットカラーで、華やかな柑橘とスパイスの香りを感じると共に、クリーミーな泡立ちと爽やかな喉ごしで、特に女性に人気の高いビールです。
喉が渇いた時や、食前酒としても楽しめますし、軽めの前菜や刺身などの魚料理によく合います。
主要なビールメーカー解説
ビールは、江戸時代に長崎の出島を通じて日本に入ってきました。
しかし、そこから国内に浸透するには長い時間がかかり、日本に初めてのビール醸造所「ジャパン・ヨコハマ・ブルワリー」が設立されたのは、1869年のことです。
その後、横浜を始め、港町を中心にさまざまな地域で、アメリカやドイツといった外国人によってビール醸造所が設立されていきましたが、1872年に大阪市に作られた「渋谷(しぶたに)ビール」が日本人初のビール醸造・販売会社であり、1876年に札幌に作られた「札幌麦酒製造所」が、日本初の本格的な醸造所です。
「札幌麦酒製造所」は後にサッポロビールになり、1885年設立の「ジャパン・ブルワリー」はキリンビールに、1889年設立の「大阪麦酒」は後にアサヒビールになりました。
日本国内でビールの消費量が増えたのは、1950年代後半以降、冷蔵庫が家庭に普及したことが理由と言われています。
日本国内のビールメーカーは、よくビール4社と言われますし、5大ブランドとも言われますが、代表銘柄と共に、紹介していきます。
キリンビール
1885年に横浜山手に住む在留外国人らによって設立されたのが「ジャパン・ブルワリー・カンパニー」で、後のキリンビールです。
ドイツから醸造技師を連れてきて、麦芽やホップといった原料や機械設備などもドイツから輸入し、本格的なビール作りを行いました。
キリンビールが発売されたのは1888年のことですが、本格的なドイツ風のラガービールとして高い評価を受けました。
そして1907年にジャパン・ブルワリーの事業が継承されて、「麒麟麦酒株式会社」が設立されました。
今も熱処理法で作られている「キリン クラシックラガー」、一番搾り麦汁しか使わない「キリン一番搾り生ビール」や、新ジャンルの「本麒麟」に加え、2021年にはクラフトビール普及のため「SPRING VALLEY 豊潤<496>」を開始すると共に、会員制生ビールサービス「キリン ホームタップ」といった提案を行っている、有名なメーカーです。
キリンラガービール
ビールの詳細
・原材料名:麦芽、ホップ、米、コーン、スターチ
・アルコール分:5.0%
・内容量:350ml
キリンと言えば、なんといっても「キリンラガービール」です。
2010年の味の改良からさらに10年経過した2020年7月、10年ぶりにリニューアルが行われました。
実はこの2020年は、ビール類の推定シェアで、アサヒビールを抜いて11年ぶりにキリンビールが首位となった記念すべき年です。
実は2010年も2020年も、デザインは日本を代表するクリエイティブディレクターである、佐藤可士和(かしわ)さんが担当しました。
ぱっと見ただけではわからないデザインの変更ですが、細かいところが結構変更になっています。
そして味ですが、ホップの苦みがよく効いていながらも、軽快で喉ごしのよい、リニューアル前よりもさらに飽きのこない味に仕上がっています。
これは、苦みや渋みの強いホップからドイツ産のホップに変更したことで、爽やかな香りを増すと共に、苦みはありながらもバランスのよい味に調整できたことによります。
日本のビールを楽しむのであれば、忘れてはいけない銘柄です。
アサヒビール
アサヒビールの前身は、1889年に設立された「大阪麦酒会社」で、1892年にアサヒビールの販売が開始されました。
アサヒビールは1900年のパリ万博にも出品していて、最優等賞を受賞すると共に、日本初の瓶詰の生ビールの発売を開始しました。
実は、缶ビール、ビール券、アルミ缶のビールといった今では当たり前のものは、全てアサヒビールが始めたことなのです。
そして、アサヒビールと言えば「アサヒスーパードライ」と言うように、1987年に大ヒットビールが生まれました。
また、2021年には缶のフタが全開できる、「アサヒスーパードライ 生ジョッキ缶」を発表し、あまりの人気に休売になる騒ぎとなりました。
そしてついに、「アサヒスーパードライ」は2022年3月、初のフルリニューアルが実施されました。
アサヒスーパードライ
ビールの詳細
・原材料名:麦芽、ホップ、米、コーン、スターチ
・アルコール分:5.0%
・内容量:350ml
36年ぶりに行われたリニューアルのポイントは、「アサヒスーパードライ」の命である辛口でキレのよさはそのままにしながら、飲み応えを向上させたことです。
例えば、ホップを煮沸過程の終了直前に入れることで香りを追加したり、酵母の働きを調整することで、発酵による香りを強めるといった工夫をしています。
糖質などのスペック自体は変わっていないのに、以前の「アサヒスーパードライ」より香りが強いせいか、フレッシュ感が強く、さらにひと口目がドンときます。
しかし本来のキレがそのすぐ後に来て、喉ごし爽やかに感じられるのは、さすが「アサヒスーパードライ」です。
辛口タイプが好きな人には、文句なくお勧めのビールです。
サントリービール
1869年に大阪でワインの製造販売をはじめた「鳥井商店」が、1921年に「株式会社 寿屋」を創立、そして1937年に国産のウイスキーである「サントリー角瓶」を発売したのが、サントリーの始まりです。
1963年、2代目社長である佐治敬三氏によって社名は「サントリー株式会社」に改められ、ここでビール事業に参入したのですが、キリンビール、アサヒビール、そしてサッポロビールという3つのブランドが市場を独占していたところへの挑戦でした。
そして1986年、麦100%の格上のビールとして「サントリーモルツ」は見事にヒットし、サントリーのビール事業はシェア10%を占めるようになりました。
さらに2003年に「ザ・プレミアム・モルツ」、2008年に「金麦」とヒットしたことでサッポロビールを抜き、ついに業界第3位になったのです。
この2つに加え、ノンアルコールの「オールフリー」が、現在のサントリーのビール系飲料の3大ブランドです。
ザ・プレミアム・モルツ
ビールの詳細
・原材料名:麦芽、ホップ
・アルコール分:5.5%
・内容量:350ml
「ザ・プレミアム・モルツ」に使われている麦芽は、ダイヤモンド麦芽と言い、旨味がたっぷりだけど構造が硬く、旨味を引き出すには2回煮沸をする必要があります。
ホップは華やかな香りの欧州産にこだわり、複数回に分けて投入する製法を開発しました。
そしてサントリーの命である、天然水での醸造にこだわり、世界最高峰のビールを作るという夢を追って、「ザ・プレミアム・モルツ」が出来上がりました。
「プレモル」の愛称で呼ばれるこのビールは、不思議なくらいに評価が分かれるビールとして有名です。
華やかなホップの香りが強く、その分苦みも多めに作られているせいか、とても飲みやすく喉ごしもよいのですが、全体的に各要素が強めでまとめられている印象があります。
「キリンラガービール」や「アサヒスーパードライ」のように特徴なくバランスが取れているところが、評価の分かれるポイントと言えます。
ヱビスビール
1887年、東京や横浜の中小の資本家が集まり、「日本麦酒醸造会社」は設立されました。
その2年後の1889年には、現在の目黒区三田に、レンガ造りで3階建ての近代建築であるヱビスビール醸造場が完成し、設備も醸造技師もドイツから揃え、同年12月からビール醸造を開始しました。
翌1890年、恵比寿ビールが発売、1899年には、日本初のビヤホールである「恵比寿ビール BEER HALL」を現在の銀座8丁目にオープンしました。
そして1901年、日本鉄道が日本麦酒の要請で、ビール専用の貨物駅「恵比寿停車場」を開設したことで、1906年には現在のJR「恵比寿駅」が開業しました。
これは、商品名が駅名になり、さらには地名の起源となった、珍しい事例です。
同じ1906年、札幌麦酒の東京進出によって壊滅的な打撃を受け、結果的に合併し、大日本麦酒株式会社、後のサッポロビールとなりました。
恵比寿工場は竣工から100年の1988年、閉鎖となり、現在ではヱビスビール記念館でヱビスの歴史に触れることができます。
ヱビスビール
ビールの詳細
・原材料名:麦芽、ホップ
・アルコール分:5.0%
・内容量:350ml
麦芽とホップだけの、麦芽100%ビールで、熟成期間がかなり長いビールとして有名です。
深い味とコクにこだわって作られているため、味の印象が強く、泡持ちもよく、キレよりもコクの好きな人にはうれしいビールです。
とてもプレミア感があり、「ヱビスビール」には根強いファンがいるのも有名です。
その反面、キレやさっぱりした軽い味のビールが好きな人には重く感じられてしまうため、敬遠する声があることも事実です。
おいしくて味の深いビールですので、是非試してみてください。
ちなみに、「ヱビスビール」の「ヱ」は、ポルトガルの宣教師が日本人の発音を聞いて「YEBISU」と表記したことと、「ゑびす」という旧仮名をカタカナにすると「ヱ」になることが由来です。
サッポロビール
サッポロビールは、1876年に札幌に建設された「開拓使麦酒醸造所」が始まりです。
低温で発酵、熟成させたビールは「冷製 サッポロビール」として発売され、ラベルに描かれた開拓使のマークである「北極星」は、今でもサッポロビールの伝統的シンボルになっています。
このシンボルである赤い星印により、「サッポロラガービール」は「赤星(あかぼし)」の愛称で、町中華や居酒屋で多くの人に親しまれています。
そして、赤星と比べるように「黒」の名で親しまれているのが、金色の星印の「サッポロ生ビール黒ラベル」です。
合併したことでブランドとなった「ヱビスビール」も含め、「サッポロラガービール」、「サッポロ生ビール黒ラベル」は、サッポロビールの3大ブランドになっています。
サッポロ生ビール黒ラベル
ビールの詳細
・原材料名:麦芽、ホップ、米、コーン、スターチ
・アルコール分:5.0%
・内容量:350ml
ホップの香りも強く、コクとうま味、苦みもしっかりとあるビールです。
キレが若干弱い感じがあるものの、飲み終えた後のすっきりした感覚が爽やかで、濃厚なビールかと思って飲んでみると、以外にもバランスのよい仕上がりになっています。
ビールの売上としては、どうしてもキリン、アサヒ、サントリーにシェアでは及ばないものの、実は一般のビール好きを対象としたアンケートなどでは、他を抑えてダントツの1位になることが多いのも、「サッポロ生ビール黒ラベル」です。
ぜひ他メーカー好きな方にも一度は試してほしいビールの一つです。
糖質ゼロやノンアルコールビールも登場
健康志向が高まる中で、健康とは遠いと思われている位置関係にあるビールが、健康志向に向かった結果が、糖質ゼロやノンアルコールというジャンルです。
元々、車を運転する人はビールが飲めないとか、妊婦はビールを飲んではいけないとか、アルコールを含むがゆえにどうしても制限がかかるのは仕方のないといった状況で、飲みたくても我慢しなければいけませんでした。
そこへ健康志向というキーワードが加わり、多くのビールが発売されているのが現状です。
糖質ゼロだからおいしくないとか、ノンアルコールだからおいしくないというイメージを打破するように、糖質ゼロやノンアルコールでも飲んでおいしいビールとして発売されています。
クラウスターラー(CLAUSTHALER)
ビールの詳細
・原材料名:大麦麦芽、ホップエクストラクト、ホップ、炭酸
・アルコール分:0%
・内容量:330ml
・原産国名:ドイツ
・醸造所:ラーデベルガー醸造所
「クラウスターラー」はノンアルコールの中でも、とても人気のあるビールです。
余計な添加物を使わずに、大麦麦芽、ホップエキス、炭酸のみで作られていて、ホップの香りと泡立ちが際立っています。
他のノンアルコールビールには、比較的酸味を感じるものが多くありますが、酸味は少なめで、甘さの方が勝っています。
ノンアルコールで、且つ脂質もゼロですので、普通のビールに比べると味は軽めですが、爽やかに仕上がっています。
ちなみに、アルコール分は0%と記載されていますが、実際は0.4%くらいあるようです。
日本の酒税法では、アルコール分1%以上なら酒類で、1%未満ならノンアルコールと規定しているため、あくまで法律上のノンアルコール飲料という位置づけです。
車の運転など、本当にノンアルコールのものを飲みたいときは、「アルコール分0.0%」と記載されているものにしましょう。
キリン一番搾り糖質ゼロ
ビールの詳細
・原材料名:麦芽、ホップ、米、コーン、スターチ
・アルコール分:5.0%
・内容量:350ml
2020年10月、キリンビールは日本のビールカテゴリーで初めて糖質ゼロの新商品、「キリン一番搾り 糖質ゼロ」を発売しました。
キリン独自の「新・糖質カット製法」を採用し、350回以上の試験醸造の結果、この味が実現しました。
「ビールは好きだけど、体型も気になるから最初の一杯だけ。」という言葉が解発のきっかけと言う通り、気兼ねなく飲めるおいしいビールに仕上がっています。
もちろん、「やはり普通のビールの方が好き」という人も多くいますが、発泡酒や第3のビールの糖質カットとは違います。
健康を考えるのであれば、普通のビールに近いけれど軽い飲み口である、「キリン一番搾り 糖質ゼロ」がよいという人も増えています。
ビール Q&A
ひと口にビールと言っても、スタイルも違えば、以前に比べて種類自体も多くなっています。
ただの「ビール」という言葉だけでは分からないこともありますので、ビールに関するQ&Aを簡単に紹介します。
ビールと発泡酒、第3のビールの違い
ビールは、基本は麦芽、ホップ、酵母、水から作られますが、この4つの原料以外の原料のことを副原料と呼びます。
たまに「モルト」という言葉を耳にしますが、これは麦芽という意味の英語です。
さて、日本には酒税法という法律があり、もし副原料を使う場合には、法律で決められた範囲内にする必要があります。
この範囲を超えたものは、ビールではなく、発泡酒と呼ばれることになるのですが、2018年に酒税法が改正され、ビールの定義が変わりました。
発泡酒とは?
新しい定義では、「麦芽比率50%以上であること」、また、「副原料の重量の合計は、使用麦芽の重量の5%の範囲内であること」とされていて、副原料として使えるものも決められています。
これに対し発泡酒の定義は、「麦芽比率50%未満のもの」、「麦芽比率50%以上であっても、ビールに使える原料以外の原料を使用したもの」、「麦芽比率50%以上であっても、規定量を超えて副原料を使用したもの」とされています。
ではどの部分が以前と変わったかと言うと、麦芽比率が約67%から50%に引き下げられたことと、副原料として使えるものが増えたという2点です。
簡単に言うと、厳しかったビールの条件が緩くなり、色々なビールを作ることができるようになったということで、法改正前は発泡酒だったものが、改正後にはビールになったものもあるということです。
第3のビールとは?
そして第3のビールは、ビール、発泡酒の次なので第3と呼ばれていましたが、今では混乱を避けるため、「新ジャンル」と呼ばれています。
材料や作り方が既にビールではないので、この呼び方は正解で、麦芽ではなく豆を発酵させたものや、発泡酒にスピリッツを加えたものなどがあります。
クラフトビールってなに?
よく耳にするクラフトビールという言葉ですが、アメリカにはブルワーズ・アソシエーションという協会があるため、その条件も決まっているのですが、実は日本には明確な定義がありません。
そのため、大手メーカーではなく、地域密着の小さな醸造所で作られているビールを、日本ではクラフトビールと言うことが一般的です。
小さな醸造所はタンクも小さいため、作り手が作りたいビールを思ったように作ることができるというメリットがあります。
このことが、品質を重視しながらも、多くの種類と個性あるビールを創り出せた理由です。
しかし最近では大手メーカーもクラフトビールを作り始めていたり、変わった副原料を使用したり、クラフトビールの範囲がどんどん広がっているため、ますます定義が難しくなっているのが現状です。
地ビールってなに?
1994年4月、酒税法が一部改正され、ビールの製造免許取得に必要な年間最低製造数量が、2000キロリットルから 一気に60キロリットル に引き下げられました。
これをきっかけにして、日本全国各地に少量生産で、且つ地域密着型の、オリジナルビール が続々と誕生しました。
翌1995年には新潟のエチゴビール、 北海道のオホーツクビールが開業し、さらには宿泊施設や自治体が主導する第3セクターの参入などにより、観光資源として捉えられたことで、わずか5年で全国に300もの醸造所が作られました。
地ビールに明確な定義はなく、日本酒に地酒があるように、ご当地ビールを地ビールと呼び始めたところ、一般化したというのが通説です。
このため、クラフトビールとの境界線が、より不明瞭になっているのが実情です。
ビールと生ビールの違いは?
普段私たちが飲んでいる缶ビールや瓶ビールですが、実はそのほとんどが、生ビールです。
ビールの醸造には熱処理という工程がありますが、この熱処理を行わないビールを生ビールと言います。
ビールに用いられているのは、100度以下で殺菌するパストリゼーションと呼ばれる低温殺菌法で、元々はワインの殺菌法として微生物学者のパスツールが用いたものです。
100度以下で殺菌すると、アルコール分を飛ばすことなく殺菌できる他にも、素材の味に変化を及ぼさないという利点があり、そのため現在では牛乳の殺菌にも用いられている技術です。
また、偶然にも日本酒の殺菌方法として行われている「火入れ」も、同じ方法によるものです。
熱処理を行う理由
熱処理を行う理由は2つあります。
ひとつは、ビールに含まれている酵母の働きを止め、それ以上の発酵をしないようにすることです。
ビールでも日本酒でも、あえて酵母を殺菌せずに瓶内で二次発酵させるという手法を用いる場合もありますが、安定した同じ味のビールを提供するためには、この処理は必要とされてきました。
もうひとつは、文字通り余計な雑菌の活動を止めることです。
雑菌の繁殖は味や品質に影響を与えるため、やはり必要な処理なのです。
国内のほとんどは生ビール
では、なぜ現在のビールのほとんどが生ビールなのかと言いますと、醸造技術が向上したことで、熱処理をしなくても、濾過によって酵母を取り除くことができるようになったためです。
クラフトビールの中には、この濾過さえもせずに、あえて酵母を残したままにしているビールも多くあります。
濾過できるなら、全部生ビールにすればいいのではと思うかもしれませんが、熱処理したビールと生ビールでは、やはり味に差があります。
現在でも購入することができる熱処理ビールというと、サッポロラガー(通称「赤星」)、キリンクラシックラガー、アサヒスタウトといったあたりですが、町中華でビールを注文すると出てくる確率が高いのも、根強いファンが多いのも、この3銘柄です。
いずれも生ビールに比べると味がしっかりしていて、飲んだ時の満足感が高いのは熱処理ビールの方です。
是非、生ビールとの飲み比べをしてほしいビールです。
ビールのアルコール度数の違い
ビールは一般的なアルコール飲料の中でも、アルコール度数が低いものとされています。
日本国内のビールの平均アルコール度数は大体5%前後で、発泡酒や新ジャンルになると幅は広がるものの、平均としてはやはり5%前後です。
実は20年くらい前までは、アルコール度数は4%ぐらいでしたが、研究の結果、5~5.5%にすると味のバランスがよいことが分かり、現在の5%前後に落ち着いたのです。
アルコール度数の違い
アルコール度数を上げる方法は2つあり、そのひとつは原料の麦汁の濃度を上げることです。
麦汁の濃度が上がると味わいが濃くなりますが、上げ過ぎると逆にしつこくなってしまいます。
もうひとつは発酵の度合いを高くすることですが、この場合は麦汁の濃度はそのままですので、あっさりとした味のビールに仕上がります。
日本のビールはほとんどがラガービールで、しかもピルスナータイプですので、アルコール度数の高いビールは少ない方ですが、世界のビールの中にはアルコール度数67.5%という、とんでもないビールもあります。
ビール以外のアルコール飲料の度数は、以下のようになります。
- ワイン:10~15%
- ウイスキー: 40~55%
- スピリッツ:25~96%
- 日本酒: 8~20%
- 焼酎: 20~40%
ワインや日本酒のような醸造酒は比較的低めのアルコール度数で、それ以外の蒸留酒は比較的高めであることが分かります。
これはそれぞれの製法の違いと、どのような味にしたいかという「設計」の違い、そして、どの程度のアルコール度数がおいしいかという研究結果によるものです。
これはビールでも同じことで、どう作るとおいしいのか、どう作ると消費者が喜んで飲んでくれるのかということを考えて作っているということです。
ビールの種類まとめ
世界中で飲まれているビールは、大きく分けてエールとラガーに分かれ、さらに100以上のスタイルに細かく分類されています。
私たちが飲みなれている日本のビールの多くはピルスナーというスタイルのビールです。
ただ同じピルスナーにも種類がありますし、作っている醸造所によっても違いがあります。
ビールは嗜好品ですので、誰もが好きなビールというものは、おそらく存在しません。
また、酒税法の改正で、今後もさらにビールの種類は複雑になりながら増えていくはずですし、海外のビールも以前より手に入りやすくなっています。
この記事を参考にしつつ、自分に合ったビールを、是非楽しみながら探してみてください。
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